余裕なきみにチェリーランド


「桃葉くん、やっぱり、その……相当怒ってるよね?」

「……」

「ご、ごめんね……私、」


間違えてばかりだ。
情けなくなって俯く、声が少し震えて。

どうしよう、情けないのに、きっと私が悪いのに、涙なんて出てきてしまう。
間違ってもこぼれ落ちてしまわないように堪えていると、桃葉くんが痺れを切らしたようにまた息をついて。


「……別に、怒ってないから」

「え? で、でも!」

「……ただ、紡ちゃんは俺のことなんてもうどうでもよくなったんだと思ってた」


拗ねたような口ぶりで桃葉くんが吐き出した言葉。
その意味を理解して、目を見開く。


「どうでもいいわけないんですが!?!?桃葉くんは私にとっていつ何時でも唯一無二のマイヒーローでマイプリンスだよ!?」

「……。じゃあなんで、ここ最近俺から逃げ回るような真似してたの」

「っ、それは!かくかくしかじかありまして……」

「ちゃんと説明して」

「はう、だって……!」

「じゃないと許してあげない」

「怒ってないんじゃなかったの!?」

「……怒ってはないけど、傷ついた。紡ちゃんのせいで」


そうやって悲しげな瞳で見つめられたらもうだめだ。
もしかすると演技かもしれないけれど、そうだとしても私は桃葉くんには勝てない。

観念して口を開く。うう、呆れるかなあ。

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