余裕なきみにチェリーランド
信じない。信じられない。
そう思うのに、最後の最後で証拠を見つけてしまった。
桃葉くんがほんとうのことを言っているっていうエビデンス。
真相を突き止めた探偵のごとく、そろり、指差す。
その先は桃葉くんが抱えている本だ。
「桃葉くん、その本、逆さまだよ」
「……紡ちゃんのせいでね」
手に持っていた本をぱたんと閉じる。
それを机の上に置いてから、桃葉くんはこてんと首を傾げた。
もう逃げられない、って直感で感じる。
「それで、紡ちゃんは俺のことどう思ってるの」
「っ、そんなの大好きに決まってるんですが!?」
「ほんとーに?」
「本当に決まってる……っ、ていうか、私は何度も好きだって言ってた!絶対!」
「あんなギャグみたいに迫られても、本気だって思えないでしょ」
「それは酷いよ!最初からずっと本気度200パーセントだったんだから!」
「ふうん?」
心なしか嬉しそうに口元をゆるめた桃葉くん。
こう、なんか、こう……もうちょっと桃葉くんから嬉しいお言葉を頂けるかな、なんて期待してしまったのだけど、そんなことはなく、桃葉くんは閉じた本を再び手に取って。
しれっと読み始めてしまう。今度はちゃんと上下も正しい。