きみにしかかけない魔法
「やっぱここにいたんだー」
「最近昼になるとどっか行くからさみしーじゃん」
「ホント、俺ら水羽のこと探し回ってたんだからなー」
「あれ? てか、横にいるの誰?」
見たことある顔。水羽くんと同じクラスで、いつも輪の中心にいるような、……明るくて、眩しいひとたちだ。
思わず俯いて唇をぎゅっと結ぶ。
情けない。こんな時、普通の女の子なら笑顔で自己紹介できるんだろう。
──自信がない。人気者の水羽くんと一緒にいるところを見られて、どう思われるか不安で仕方ない。
不釣り合いだって、本当は自分が一番よくわかっているから。
「隣のクラスの若月紫奈だよ、知らない?」
私が自分で自己紹介しないからか、横から水羽くんが明るくそう問いかける。
困っているかな。
私のこと、情けないって思ったかな。
本当は、もっと上を向いて、前を向いて、笑顔でいたい。自分に自信が欲しい。
物語の中の、きらきらした主人公みたいに、水羽くんの隣にいてもおかしくないような、そんな女の子になりたい。
「ああ!噂の若月さん!」
「水羽がかわいーって言ってた子ね!」