きみにしかかけない魔法


「若月さん、そんな風にわらうんだ!」

「えっ、」


「ね、若月さんってずっと思ってたけど綺麗な顔してるよね」

「ええ、」


「今度メイクさせてよ!ついでにヘアセットも!」

「でも私なんか似合わない、ので……」

「えー!? そんなことないよ?」



いつの間にかかわいい女の子3人に囲まれていて、心臓がバクバクと鳴る。


カールの綺麗な巻き髪、薄いスクールメイク、短いスカート、陶器みたいに透き通った肌。

少女漫画の主人公みたいにきらきらしていて、世界が違う人たちだと思っていた。



だけど、私の周りに集まって話題を振ってくれるこの人たちから、悪意は微塵も感じない。むしろ、『友達になりたい』って、そう言われているみたい。



「……似合う、かな」

「似合わせる!よ!」



胸が信じられないくらい高鳴って、頬が熱い。

今まで、いつも下を向いて、めがねを盾にして、きっと自分から遠ざけていた。



「あとさ、私実は少女漫画が大好きで……若月さんも読んだりする?」

「え、も、もちろん……だいすき、です」

「ほんと?! わーうれしい、漫画について語れる人がいなくて」



本当に嬉しそうにそう照れて笑ったのは、前野さん。さっきメイクしたいと言ってくれたのは林さん。水羽くんにちょっかいをかけている男のふたりは新崎くんと森本くん。


────他のクラスだけど、ちゃんと前を向いて、顔を見て、わかった。

名前、わたし、知ってる。



だって、水羽くんといつも一緒にいるひとたちだから。本当はずっと、目で、追っていたから、わかるんだよ。



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