きみにしかかけない魔法
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「ごめんね、さわがしー奴らで」
「ううん、そんなことないよ」
あの後、『もーおまえら、いい加減かえって、この時間はおれの特等席なんだから』と怪訝そうに顔をしかめた水羽くんをみて、からかいながら『はいはいごめんねー』とみんなは去って行った。
『またくるね』『今度はおすすめ漫画持ってくる!』と笑顔を向けてくれたその表情が、胸が苦しくなるくらい嬉しかったこと、水羽くんは気づいてなかったかなあ。
「……いいひとたちだね、水羽くんのともだち」
「ああうん、あいつら見た目は派手だけど、すっげえいい奴らなんだよなー」
「類は友を呼ぶんだろうな」
「え?」
「水羽くんがいいひとだから、きっといいひとが集まってくるんだろうな、って」
「ふは、何それ、褒めすぎだよー」
何かの漫画で読んだ気がする。
いい人の周りには白い羽の綺麗な鳥がいて、幸福を連れてきてくれるんだって。
水羽くんはきっと、たくさんの白い鳥をもってるんだよ。
それはまるで、魔法使いみたいに周りの人まで巻き込んで、きらきらして、日だまりのようにあたたかくて、鳥の羽のようにやさしい、そんな魔法なんだよ。