きみにしかかけない魔法
「紫奈、おれはね、」
すっと、水羽くんの視線が下におちる。つられて私も。
「紫奈が描いているイラストや漫画の中だって、すっごくきらきらしてると思うんだよ」
「え……」
「こんな風に絵を描いたり、物語を生み出したり、誰でもできることじゃない。俺から見たら、紫奈の描く世界は、すごく素敵で輝いてる」
「そんなこと、」
「下ばっかり向いてるのが暗いだなんて、誰が決めたの?」
あ、と思う。
下ばかり見ていて、暗くて怖いって、皆にそう思われているって思っていた。
だけど水羽くんは、私に上を見上げさせようとしているんじゃないんだ。下から顔を覗き込んで、簡単に私に触れる。
泣きたくなるくらいやさしい魔法のように。
「水羽、くん」
「うん?」
「わたし、わたしね、」
「うん」
「水羽くんと、仲良く、なりたい」
ずる、っと。水羽くんが漫画の中みたいにわかりやすく肩を落とした。
「あれ? おれたち仲良くなかったっけー?
」
「ううん、もっと、……水羽くんに、近づきたい」
恥ずかしいし、鼓動は早いし、顔は熱い。
だけど今言わなきゃ、きっと一生言えないと思った。
「もっと……水羽くんのこと、知りたい」