きみにしかかけない魔法
溢れてしまった。こぼれてしまった。
わたしきっと、水羽くんの魔法にかかったの。きらきらして、あたたかくて、だれよりやさしい、魔法使い。
「ふはっ、もう、先越さないでよー」
「ええ、」
「それはおれから言わせてよ、紫奈のバカ」
「えっと、それはつまり……」
「うん、おれも、紫奈のことがすきだよ。めちゃくちゃすき」
夢の中なのかな。それとも漫画の世界に飛び込んじゃったのかな。
真っ直ぐ私を見ている水羽くんは恥ずかしそうに頬を赤く染めて、「もー、もっと外堀から埋める予定だったのにな」なんて呟いている。
うれしいのと、信じられないのと、気持ちが浮ついて丸くなって飛んでいってしまいそう。
どこまでいってもずるいよ、水羽くん。
「はは、なーに泣いてるの、かわいいなー」
うれしくって思わず涙が出た私の頬を、指を折り曲げてぐいっと拭う。
その力は思いのほかつよくて慣れていない。水羽くんって実は不器用なのかなあ。ねこはにんじんに見えたしね。
でもそんなところも、ぜんぶ、すき。