きみにしかかけない魔法


「ありがとう……」



ぺこり、お辞儀をすると、「どういたしましてー」と明るいトーンで返ってくる。




「あの、七原くんはどうしてここに?」

「うーん、ひなたぼっこかなー」




にこにこ、笑みを浮かべながら答えてくれる。

掴みどころのない答えに、ふわふわとした表情。

総じて、柔らかい印象を受ける。




「そういえば、大丈夫だった?すごく痛そうな音してたけど」



こてんと首を傾げた七原くん。



「お、お見苦しいものを見せてしまって申し訳ないです……」



穴があったら入りたいとはこのこと。


ぶつけたおでこと鼻の痛みはもうすっかり引いているけれど、恥ずかしさだけはしっかりと残ったままだ。



紫奈(しいな)はいつもここにいるの?」

「え!?」



驚いて声を上げた私に、「なんか変なこと言った?」ときょとん顔の七原くん。

ううん、違うの、質問自体に驚いたわけではなく。



「私の名前……」

「え、間違ってた?」

「や、合ってます」



むしろ、だからこそ驚いているの。



七原くんと私は、クラスが同じというわけでもなく、だからまさか名前を覚えてくれているなんて思わなかった。

純粋にびっくりしていると。





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