きみにしかかけない魔法
「そんなに驚くこと?」
「だって!」
「紫奈だって俺の名前覚えてたでしょ、それと一緒じゃん」
「や!全然ちがうよ!」
私は凡人……もしくはそれ以下だけど、七原くんはちがう。
学校中が注目する有名人だもの。
私じゃなくとも七原くんの存在は誰でも知っている。
七原双子────兄の七原水羽くんと、弟の七原桃葉くん。
顔がそっくりの双子、というだけでも注目を集めるのに、さらにそれがSSランクのイケメンときたら、有名になるのも必然と言えるだろう。
加えて、七原双子は顔がそっくりなのに性格が似ても似つかないことでも有名なの。
弟の桃葉くんがいわゆるクール、人を簡単に寄せつけないのに対して、今私の目の前にいる水羽くんはその真逆。
人懐っこくて、彼の周りにはいつも人だかり。男女問わず人気があって、まとっている空気があったかくて柔らかい、ひだまりのようなひとだ。
七原くんと話すのは、私はこれが初めてだけど、全然そんな感じがしないのも、彼の人柄があってこそだと思う。
「紫奈?」
名前、また呼ばれて、びくっと肩が震えた。
ああ、また考え事してた。
うーん、すぐにトリップしてしまう癖、直した方がいいかなあ。