撃ち抜くならキスのあとで
「っ、」
「───せっかく逃がしてあげようと思ってたのに、馬鹿だな」
意地悪な笑みが私の心をぎゅっと掴む。
どくんどくんと、心臓がうるさい。
「優乃、口開けて。俺に応えて」
言われた通りに口を開けて、荻原くんがするように従う。
軽く噛まれた舌が痺れてジンジンして、その感覚が毒みたいに全身に回る.
「荻原、くん」
「海里」
「───海里、くん」
ああ、なにしてるんだろう。
もっと普通の高校生活を送るつもりだったのに。
荻原くんは王子様なはずだったのに。
だけど本当の彼とキスしてる今が、間違いだらけの正解だと思うから。