びわの実。
。
いつの間に無くなってしまったのだろう。
初夏、あんなに沢山の実を付けていたびわはもう影も形も無く。今は、その葉だけが7月の雨に濡れている。
ふと‥
昔、飛び込みで営業をしていた時に偶然出会った老婆の事を思い出した。そして、もっと彼女を思い出したくて本棚を探す。『びわの実』という詩集がある筈なのに今日も見付からない。
当時、もう80歳は過ぎてたかな‥酷く腰の曲がった小さな人で、ある田舎町の古い家に彼女は嫁と二人で住んでいた。
「あれ?こんなに大きなお家にお嫁さんと二人暮らし?おばあちゃんの息子さんは?」
と私が尋ねた時彼女はその詩集を差し出し「その中に私の息子は居ます。良かったら、読んでみてください。」と言ったのだ。
おばあちゃんの息子さんは亡くなっていて‥まだ日が浅かった。働き盛りの50代だというのにある日脳梗塞で突然だったらしい。 「もう‥寂しくて寂しくて。必死で息子の事を綴ったんですけど‥。なんせ素人ですからねえ。」という彼女の傍らには売れ残った詩集が段ボールの中に並んでいた。
数十冊買って会社で配ったりしたものの、当時私はあまり真剣には読まなかった。
初夏、あんなに沢山の実を付けていたびわはもう影も形も無く。今は、その葉だけが7月の雨に濡れている。
ふと‥
昔、飛び込みで営業をしていた時に偶然出会った老婆の事を思い出した。そして、もっと彼女を思い出したくて本棚を探す。『びわの実』という詩集がある筈なのに今日も見付からない。
当時、もう80歳は過ぎてたかな‥酷く腰の曲がった小さな人で、ある田舎町の古い家に彼女は嫁と二人で住んでいた。
「あれ?こんなに大きなお家にお嫁さんと二人暮らし?おばあちゃんの息子さんは?」
と私が尋ねた時彼女はその詩集を差し出し「その中に私の息子は居ます。良かったら、読んでみてください。」と言ったのだ。
おばあちゃんの息子さんは亡くなっていて‥まだ日が浅かった。働き盛りの50代だというのにある日脳梗塞で突然だったらしい。 「もう‥寂しくて寂しくて。必死で息子の事を綴ったんですけど‥。なんせ素人ですからねえ。」という彼女の傍らには売れ残った詩集が段ボールの中に並んでいた。
数十冊買って会社で配ったりしたものの、当時私はあまり真剣には読まなかった。