キミだけのヒーロー
「あ! いーもん見せてあげる!」


部屋に入るなり、カナコがクローゼットの中から何かを取り出してきた。


「卒業アルバム……」


「うん。中学時代のサユリを見たいやろ?」


カナコはその整った顔に不似合いな“ニヒヒ”って感じの笑みを浮かべた。

そうか……。

オレ達が別れたことまだ誰も知らないんだもんな。

カナコの行為は、オレへの親切心からなんだ。

そうは思ってても、オレの体は動き出さない。


「ケンジ?」


オレが黙っていることに、カナコが不思議そうな顔を向けた。


「別に今見なくてもいんじゃない?」


何かを察したヤマジがオレの代わりに口を開いてくれた。

だけど……。


「いや。見せてもらうわ」


カナコの手からアルバムを受け取り、床にあぐらを組んで座った。


こうなりゃ荒療治だ。

見てやろうじゃないの、中学時代のサユリちゃんを!
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