キミだけのヒーロー
考えた計画はこうだ。

オレは目立つ二人の間にいるからダメなんだ。

つまり……逆にオレを目立たせるような、できるだけ地味なヤツをグループに引き入れる。

そうすりゃ、オレの地位も上がるって具合。
(ん? 浅はかすぎるって?)



誰をターゲットにするかはもう決めていた。

オレは教室に着くなり、そいつの席に向かう。

それは昨日うちのクラスに来たばかりの転校生だ。


昨日の朝のHRで彼の挨拶があったらしいのだが、オレはその間眠っていて、どんなヤツだったのかほとんど知らない。

だけど、寝ぼけまなこで見たそいつは、色白で、背もオレと変わらないぐらい小柄で、ヒョロっと痩せてて……

お世辞にもイケてるタイプじゃなかった気がする。

きっとあれはオタクってやつだな。

あれでは友達もできないだろう……。

なんてことを考えながら、オタク……いや、例の転校生の席の前に立った。

彼は机につっぷしていた。

寝てるのかな……。

軽く彼の肩を叩いた。


「おい。転校生」


無視かよ――。

転校生は、ピクリとも反応しない。


よくよく見るとイヤホンを耳につけている。

音楽を聴きながら、眠っているらしい。


オレは耳からイヤホンを片方はずすと、さっきより大声で、わざと彼の耳元で言った。


「おい! 転校生!」


「ん……」


ようやく彼が反応した。

目をこすりながら、顔を上げる。


「何?」


その顔を見た瞬間……


オレの時間は止まった。


そこには、今まで見た事もないようなキレイな顔の美少年がいたから。
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