キミだけのヒーロー
いやいやいや……。


そんなはずないって。

オレがタオルを借りたあの試合はたしか中学2年の秋だった。

その時点では少なくとも北野典子はこっちにいなければならない。

オレはその事をカナコに訴えた。


カナコは首を傾げながら、「確認してみる」と言って電話を掛け始めた。

そして電話の相手と一通り話し終えると、オレの耳に携帯を押し当ててきた。


「この子、北野さんと一番仲の良かった子やねん。直接確認してみ?」


オレは電話の相手に簡単に挨拶を済ませると、彼女にオレの疑問を投げかけた。

ほんとに北野典子が引っ越したのは夏休みなのかと。

そしてそれなら、一番気にかかることも……。



《うん。あの事故も夏休み中やったよ》


「ほんまに……?」


《うん。ちょうどお盆やってん。あたし、お盆明けにノリコに会いに名古屋まで遊びに行く予定やってん。わたしが行く3日前に……あんな事故に……》


そこで彼女は口ごもってしまった。

最後の方は声が震えていたから、泣くのを我慢していたのかもしれない。

これ以上の質問は酷かもしれないと思ったが、オレはどうしても気になったことを確認しておきたかった。





「その事故の日にち……覚えてる?」
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