キミだけのヒーロー
《ああ。うん、覚えてるで。お前、負けてめっちゃ落ち込んでたやつやろ?》


「あれも当然、秋やったよな? オレがレギュラーになってからやもんな?」


《そうやな》


「ありがとう。急に、ごめんな」


そこで電話を切った。


そうだ。

やっぱオレの記憶は間違ってない。


だとしたら、いったいどういうことだ?


3年前の夏休みに事故に遭い、それ以来ずっと今も意識が戻らない北野典子。

そんな彼女にオレは秋になってから出会ったのか?

しかも彼女がもういないN中で?


そんなことあり得ないよな……。

ファンタジーやオカルトの世界じゃあるまいし、魂だけがフッと飛んでくるとか……。


いやいやいや。

ははっ。

一瞬よぎった考えに、自分でも笑いそうになった。

でも……。


「なぁ。オレって、霊とか呼び寄せてしまうタイプなんかな?」


気がつくとオレはポツリとそう呟いていた。
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