キミだけのヒーロー
先日ファーストフード店で、ヤマジから言われた言葉を思い出したからだ。

――『ケンジみたいなタイプがやばいんじゃないの? 霊って、お人好しっていうか、優しい人のところに来るみたいだよ?』



「オレが言ったこと気にしてんの? あれはからかっただけだって」


ヤマジもその事に気づいたのか、すぐに否定してくれた。


そこでオレは先日見た夢のことを話した。

あの寂しげな北野典子の口元がどうしても気にかかっていること。

さらにその夢を見たのは、ヤマジと会った前の晩だから、たしか8月14日だ。

そして北野典子が事故にあったのは、3年前の8月14日。

こんなことも単なる偶然なんだろうか?



「ど……どういうことよぉ?」


カナコは自分で今想像したことを認めたくないかのように、戸惑った顔をしている。

だけど、言葉にしなきゃ不安だったようだ。

オレ達を代表するかのように、みんなの考えを口にした。





「それって……。北野さんの魂みたいなもんが、体を離れてケンジの前に現れたってこと?」



「うん。ひょっとしたらそうかも……」


「だとしたら……」


ヤマジはオレの目を見てゆっくりと話した。


「何かケンジに伝えたかったことがあるのかもね」


「ああ」


3年前の夏、北野典子は事故に遭い意識不明の重態となった。

いったい彼女は何を言いたかったんだろう?




なんでオレの前に現れたんだ?



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