キミだけのヒーロー
「男紹介して欲しいって頼まれてん。んで、同じクラスの小川ってヤツに紹介してん。けど……その子、実は、最初からオレ狙いやったらしくて……。で、オレ全然その気もないのに、小川は勝手に怒ってるし、その子からはストーカー……」


「え……ちょっ」


サトシの話の途中でオレは声を出した。

それをどう思ったのか、サトシはオレをちらりと見た。


「いや、つきまとわれてるっちゅうか……。でも、1日に50通ぐらいメールくんねんで? いつの間に調べたんか、家の前までやってきたりするし……。もう、かんべんしてくれって感じ」


「ちょっと待って!」


思わず大声を出したオレに、サトシとシィが注目する。


「それって……」


今オレは頭をフル回転させて考えをまとめている。

S女の女の子を小川ってヤツに紹介したって?

つまり……それは……。


「その子ってひょっとして“サユリ”って名前?」


「ああ。そうやで。なんで知ってるん? そういや、お前の彼女もサユリやな。同じS女やし」


「ちょっ……マジで?」


オレは頭を抱え込んだ。


「ケンジ? どうかしたん?」


シィがオレに心配そうな目を向ける。


「……ごめん……オレ帰るわ」


そう呟くと二人に背を向けた。

< 120 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop