キミだけのヒーロー
家に帰ったオレは、携帯を片手に重い体をベッドに沈めた。


どうしよう……。


ただぼんやりと携帯画面を見つめる。

開いているのは、サユリの電話番号。

あと通話ボタン一つでサユリに繋がる。

だけど、親指を動かすだけの、そんな簡単な動作ができない。


謝らなきゃ……。


オレは勝手に勘違いしてたんだ。

あの時、ファーストフード店でS女の女の子達が噂していたのは、サユリとは別人の“サユリ”だったんだ。

つまり、あのサユリとサトシの間には何もなかった。


それなのにオレは勝手に勘違いしたまま、彼女を傷つけてしまった……。

なんではっきり確認もせず、あんな別れ方をしてしまったんだろう。


すぐにでも謝らなきゃ。

そう思うのに、手が動かない。


だって今更どうすればいい?

「すみませんでした」で許されるようなことなのか?

そんなのムシがよすぎやしないか?


オレはベッドに横になったまま途方にくれていた。



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