キミだけのヒーロー
ふいにちぃちゃんの視線を感じた。


「何?」


オレと目が合うと、ちぃちゃんは恥ずかしそうに慌てて視線をそらす。

彼女のこういうとこ、男慣れしてないっていうか、なんか可愛いなっていつも思う。


「毎日練習大変だなぁ……って思って。サユリちゃんとデートもできへんのちゃう?」


「あー……してるで。夕方からとかやけどな」


なぜか咄嗟にウソをついてしまった。

オレは相変わらずサユリと別れたことを誰にも話していない。


特にちぃちゃんには言えない気がした。

ちぃちゃんは優しい子だから、話せばオレは彼女にうんと甘えてしまいそうだ。


だけど、そんなことすれば、彼女のことだから人一倍心を痛めて、まるで自分のことのようにオレを心配するだろう。


ちぃちゃんには、余計な心配かけたくない。

彼女にはいつも笑ってて欲しい。
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