キミだけのヒーロー
「そっか。相変わらず、ラブラブ?」


どうやらちぃちゃんはオレのウソにも気付かなかったようだ。


「うん……。ラブラブやで」


「いいなぁ……」


「え? 何が?」


「彼女がいて良いなぁって思ってん。わたしなんて彼氏いない歴……えーと、あ! 明日で17年だ!」


「え? 明日誕生日なん?」


「そう。8月31日。夏休み最後のめっちゃ憂鬱な日が誕生日やねん」


「はは。まぁ、でも、ちぃちゃんがその気になったら、彼氏ぐらいすぐに出来るって」


ちぃちゃんの気持ちもシィの気持ちもわかってるくせに、我ながら無責任な発言をしてしまったと、口に出したとたん反省した。

だけど、彼女はそんなオレの気持ちなんて気にするようすもなく「無理無理!」と言って、大袈裟に手を顔の前で振る。


「ちぃちゃんは気付いてないだけで、ちぃちゃんのこと、『いいなぁ』って思ってるやつはいると思うで」


これは本心だった。

彼女は自分の魅力を全く自覚していないようだ。

確かにユカリやカナコみたいに特別目を引くルックスではないかもしれない。

だけど、そばにいると落ち着く。

なぜかほんわかした優しい気持ちになれる。

そんな風に感じさせてくれる女の子を男が放っておくわけない。

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