キミだけのヒーロー
オレは前々から気になっていたことを彼女に言うことにした。

まるでお預けをくらった子犬みたいに、オレの次の言葉を待つちぃちゃん。


「オレら、誰もちぃちゃんの携帯の番号もアドレスも知らんやろ? ちぃちゃん誰にも教えてないやろ?」


そう。

知り合ってもう何ヶ月も経つというのに、オレ達は誰もちぃちゃんのアドレスを知らない。

それ一つにしたって、なんとなく簡単には教えてもらえなさそうな雰囲気が彼女にはあるんだ。


「だって、それは誰も聞いてくれへんから……。聞かれたらもちろん教えてたよ!」


彼女はムキになって言う。

確かに、ちぃちゃんからすれば、自分でガードを固くしてるつもりは無いのだろう。


「ほんま? じゃ、オレに教えてよ」


「えっ……」


「プッ。ほら、固まってる」


「それは……。ケンちゃんの彼女のサユリちゃんはどう思うんかな……サユリちゃんの立場になったら、自分の彼が他の女の子のアドレスとか聞くの嫌じゃないかなぁ……とか考えてしまって……」
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