キミだけのヒーロー
部室に戻ってしばらくシィを待っていたがなかなかこないので、オレも美術室に行くことにした。



誰もいない静かな廊下に自分の足音だけが反響する。

それはまるで現実感がなくて夢の中を彷徨っているようだった。

ふいにこの世界に自分一人だけが取り残されたような寂しい気分になる。


最近自覚したことなんだけど、どうやらオレってやつは相当な寂しがり屋らしい。


明日からはまたいつもの日常が始まる。

この廊下にも生徒達の話し声や足音が溢れて賑やかになるんだろう。


そんなこと考えていたら、廊下の向こうからパタパタと誰かがやってくる音が聞こえた。


――ちいちゃんだ。

声をかけようとした瞬間、彼女の肩がオレにぶつかった。

ずっと下を向いていたから、オレの存在には気づかなかったんだろう。


「ごめんなさっ……」


彼女は震える声でそう呟くと、そのまま走って行ってしまった。


――なんだ？

泣いてた？
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