キミだけのヒーロー
顔は見えなかったが、多分そうだ。


何かあったんだと直感したオレは美術室へと急いだ。


開けっぱなしのドアから中を覗く。

シィがスケッチブックを手にしたまま、呆然と佇んでいた。

オレはドアに寄りかかってしばらく様子をうかがっていた。

オレの視線を感じたのか、ふいにシィが顔を上げた。


「えらい遅いから、なんかあったんかなぁって思って見に来てんけど……?」


そう言いながらシィに近づいていった。

シィは明らかに動揺している。

オレはシィの手元のスケッチブックを顎で指した。


「それ、ちぃちゃんの? さっき廊下ですれ違ってんけど……。何かあったん……?」


いや、もうこの時点でわかっていた。

というかヤツの顔を見れば、そんなのバレバレだった。

まるで短冊に『告白されました』とでも書いて顔に貼り付けているかのようだ。




「告白でもされた?」
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