キミだけのヒーロー
「好きやからに決まってるやろ! お前は頭良いのに、なんで女の子の気持ちがわからんねん!」


その瞬間シィの表情が変わった。

シィはしばらく考え込んでそれからこう言った。


「ケンジぃ……。ちぃちゃんの携帯の番号わかる?」


ほんと世話のかかるヤツだなぁ……。

オレはジャージのポケットをゴソゴソと探り、小さな紙切れを無言で差し出した。

まさか昨日もらったこれが今日になって役に立つとは、オレがちぃちゃんの携帯番号を聞いたのは絶妙なタイミングだったのかもしれない。


シィは紙を開いて中を確認すると、急いで教室から出て行ってしまった。


その瞬間オレの頭の中に昨日のちぃちゃんとの会話が浮かんだ。


――オレが彼女にしてやれることがあるとするなら……。


オレはシィの後を追うように教室を飛び出した。


廊下を走るシィの後姿が見えた。

その背中に声を掛ける。


「シィ! あの子、今日、誕生日やねん! だから……!」


そこで言葉がつまった。

だからどうしろとオレが言えることじゃない。

ここから先はシィが決めることだ。

だけど、あの子の想いをどうかわかってやって欲しい。

傷つけないであげて欲しい……。

そんな風に願いながらシィの後姿を見送った。

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