キミだけのヒーロー
お姉さんは振り返る。


「オレ……何もできへんけど……。祈ってます。 典子さんが早く目を覚ますこと。 このタオルは典子さんの物じゃなかったけど……。目、覚ましたら絶対会いに行きます」


「わかった。目を覚ましたら、日下部君に一番に報告するね!」


そう言ってお姉さんは大きく手を振って去っていった。



タオルのことはまた振り出しに戻った。


だけどもう、そんなことどうでもよくなっていた。

この数ヶ月オレの中には確かに北野典子が存在していた。

やっぱりオレはいつか彼女に会いたい――そんな風に思う。


いつの間にかあたりは、深いブルーの闇に包まれていた。

どこからともなく聴こえる虫の声と汗を乾かしてくれる風が秋を感じさせる。

もう、夏も終わりなんだな。

ふとそう思った。


明日からは新学期だ。


――オレにはやらなきゃならないことが、まだまだある。
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