キミだけのヒーロー
ようやく解放された頬を手でこすりながらオレはサトシを見つめる。


「お前ってなんつーの? ムードメーカーやん? 転校生やったヤマジや、人見知りするちぃちゃんがいつの間にかオレらに馴染んだんもお前がおったからやと思う。お前の存在に救われてるヤツって絶対おんで。オレもそうやし」


「えっえっ? なんやねん急に……」


サトシがオレを褒めるなんてありえねー。

なんだよ?

こそばゆいだろうが。


照れ隠しのために、コーラを勢いよく喉に流し込んでむせてしまったオレを、サトシはケラケラ笑いながら見ていた。

そして、サトシはそのまま柔らかな表情で話し始めた。


「オレ、あの子に会ってちゃんと話そうって思ってる」


「え? あの子って例のS女のコ?」


「うん。お前の言う通りやねん。あの子の気持ちもちゃんと聞かずに、面倒なことに巻き込まれるのが嫌で逃げてばっかりやってん。ちゃんと向き合って話してみるわ」


「そっか」


「お前の言葉、ガツンときた」


サトシはそう言うと、ネクタイを持ってヒラヒラさせて見せた。



「クサッ!」

「お互い様やろ!」


オレ達は照れくさくて、意味もなく笑った。


「あ……メールかな」


携帯が制服のポケットの中で震えていた。


「シィからや……」


サトシもオレの携帯を覗き込む。

メール内容を読んで二人で顔を見合わせた。


「自転車ぁ~?」


オレ達の声が屋上に響いた。
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