キミだけのヒーロー
「ちぃちゃーん! ほんまなん? シィと付き合うってほんまなん? ちぃちゃんは、オレのもんやったのにー!」


オレはちぃちゃんの両肩をガシッと掴んで彼女に訴えた。

ちぃちゃんは、もう顔から湯気が出そうなぐらい真っ赤になっている。


「お前にはサユリがおるやろ! S女のサユリが!」


突然横からシィの手が伸びてきて、オレからちぃちゃんを引き離してしまった。


「サユリとちぃちゃんは比べられへん! ちぃちゃんは、オレの心のオアシスやったのにー!」


「あー。お前ウザイ。いいから、早よ帰れや!」


「ハイハイ」


ムカッ!

いきなり彼氏気取りっすか?

しょうがないので、オレはシィの自転車にまたがった。

そして、そのままちぃちゃんのそばまで近寄り、シィには聞こえないように、彼女の耳元で小さく囁いた。

――「良かったな」って。



そして自転車を漕ぎ出す。

なんとなく悔しいから、背後の二人に聞こえるようにわざと大きな声で言ってやった。


「オレもサユリとデートするもんねー!」

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