キミだけのヒーロー
「つか、オレらすごくない?」

「そうやな。N中相手に2-1やもんなぁ……」


チームメイトの能天気な声がオレの耳に入ってきた。


よく見ると、みんなヘラヘラ笑ってる。

たしかに、強豪相手に、オレらにしちゃよくやった方かもしれない。

だけど、負けたのに笑うってどうなのよ?

くそっ!


「顔洗ってくる……」


オレはそう言って、グランド脇の水飲み場に一人で行った。


蛇口を勢いよくひねり、頭から水をかぶる。


みんなのヘラヘラした笑い顔が目に焼きついている。

よくやったかどうかなんて関係ない。

勝負なんて、結果が全てだ。

オレにはこの状況で笑うなんてできない。

何より、最後の1点を決められなかったオレの責任は重大だ。

シィがせっかく最高のパスを決めてくれたのに……。


みんなへの苛立ちと自分のふがいなさに押しつぶされそうだ。

目と鼻の奥がツンと痛くなる。

オレは蛇口をひねって水を止めると、ブルっと頭を振った。


やべっ……

タオル……忘れてきた。

どうしよ……そう思った時、

視界の中に、白いタオルが入ってきた。


そして女の子の声がする。



「あの……これ使ってください」


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