キミだけのヒーロー
申し訳ないけど、顔を上げることができない。

さっきからこみあげてくる涙をこらえていたからだ。

既に目が充血しているのはオレにもわかっていた。

泣き顔を隠すように、いつまでも俯いていた。


「どうぞ」


彼女はさらにぐいっとタオルを差し出す。


「ありがと……」


強引な子だなぁ……なんて思いつつも、オレは俯いたままそれを受け取った。

そのタオルで拭いた顔を半分隠しながら、ようやく顔を上げた。


おそらく彼女なのだろう。

今オレにタオルをくれたと思われる人物が走り去る後ろ姿が見えた。

N中の制服だった。
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