キミだけのヒーロー
「なぁ。なんで最初から言ってくれへんかったん? タオルのこと」


オレはサユリに疑問を投げかけた。

そもそも、サユリがあのタオルをくれた張本人だということが最初からわかっていれば、こんな誤解も生まれなかったわけで……。


「だって……」


「ん?」


「あの時、ケンジ泣いてたから。そんな姿見られたって知ったら、嫌がるかなって思って」


「だぁあああああ。そゆことね」


オレはサユリから体を離した。


「たしかに、オレ、泣き虫かもしれん。こんな、情けない男でええん?」


ちらりとサユリの方を見る。


――チュッ


今度はサユリの唇がオレの頬に触れた。


「情けなくても、泣き虫でもいいよ。あたしが守ってあげるから」


そう言って、真っ赤な顔で照れくさそうに微笑む。



「あ……そだ」


サユリはそばに落ちていた自分の鞄をごそごそと探る。


「はい。幸運のお守り。ケンジに良い事がありますように」


そう言ってオレの手を取った。




「これ……」

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