キミだけのヒーロー
やっぱオレはどうしようもない泣き虫だな。


「ケンジ? どうしたん?」


心配そうにオレの顔を覗き込むサユリ。


「……良かった……良かった……」


オレは顔を覆ってただひたすら、そんなことを呟いていた。



メールは北野典子のお姉さんからだった。

それによると、北野典子はまさに今日、目を覚ましたらしい。

社会生活に戻るのはまだまだ先で、今後はリハビリをしなければならないが、とにかく一歩前進したという内容だった。


オレは閉じた携帯を握り締めて、サユリにこれまでのことを話した。


あのタオルは北野典子がくれたのだと思っていたこと。

転校していった彼女が事故に遭い意識不明だったこと。

そして今日、3年ぶりに意識を取り戻したこと。


話しながらも涙が止まらなかった。

途中からサユリも泣き出し、オレ達は涙で顔がぐしょぐしょだった。
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