キミだけのヒーロー
――――――
―――……


「やあああああ! と―――!」


自分の背丈よりもずっと高い塀の上から飛び降りる。


「ほのおのせんし! ネオレッド、さんじょう!」


家で散々練習したキメポーズもばっちりだ。


くさかべけんじ、5歳。

A幼稚園のさくらんぼ組。

只今、ヒーローごっこに夢中。

5人の戦士が悪をやっつけるヒーロー戦隊物だ。

その中でもオレが演じる役はいつも決まっている。

それはもちろん主役の“レッド”だ。

なぜか周りのヤツもオレがレッド役をやることに文句を言わない。
(つか、言わせない)

なぜならオレは自他共に認める主役キャラなのだから。



ずっとそう思っていた。

小学校に上がってもそれは変わりなかった。

背は高い方じゃないけど、スポーツが得意なオレは運動会ではいつでも一等。

ふざけたことを言って笑いを取るのが上手くて、クラスの人気者。
(お調子者とも言うが……)

先生だって、呆れ顔をしながらも、しょうがないな……って感じで許してくれちゃう。

オレって得な性格。

学年でもオレのことを知らないヤツはいないんじゃないかってぐらい目立つ方だと思う。


こんなポジションが永遠に続くんだと思ってた。

オレは一生“レッド”でいられるんだと確信していたんだ。


そう……


中学2年になるまでは……。


―――……
――――――

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