キミだけのヒーロー
あの子のヒーロー
オレ達は高校2年生になっていた。

こういうの腐れ縁っていうのかな。

オレは中2で仲良くなったメンバーと同じ高校に通っていた。


桜が満開を迎え、その花びらを風がいたずらに散らすような、そんな季節。

ある日食堂でみんなとつるんでいると、シィの幼馴染ユカリがやってきた。

そしてユカリの後ろには小柄な女の子が立っていた。

ユカリから「ちぃちゃん」と紹介されたその子は、松本千春(マツモトチハル)という名前だった。

ちぃちゃんは、ペコリと頭を下げるとオレの斜め前の席に遠慮がちに座った。


食事をしながら、オレはこっそり彼女を観察していた。

彼女の登場は、オレにとってかなり新鮮だった。

サトシやシィやヤマジ……目立つ男が揃っているせいか、オレらに寄って来る女は、どちらかといえば、派手な子が多かった。

派手というか……いわゆるキレイ目な子。

“自分に自信あります”ってタイプ。


ちぃちゃんはそういうのとは真逆にいるような子だった。

真面目を絵に描いたような、まさに“素朴”って言葉がピッタリくるような、そんなタイプだ。

人見知りするのか、さっきからオレ達の会話には入れず、一人でモクモクとお弁当を食ってる。


見ているこっちまで緊張が伝わってきそうなほど、ガッチガチのカチコチって感じ。



ふと視線をずらすと、遅れて食堂に入ってオレ達を探しているらしい、シィの姿が目に入った。
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