キミだけのヒーロー
ちぃちゃんは美術部だ。

そして美術室はオレ達サッカー部の練習場所の目の前にある。

最近のオレとシィはこんな風に休憩中に美術部を訪れるのが日課になってた。


だって、美術部にはお菓子もジュースもなんでも揃っていて、おまけにちぃちゃんの笑顔がある。

んんん……まさに癒し空間。


オレはちぃちゃんの缶の中からチョコを取り出すと、机に腰掛けそれを頬張った。

そしていつものように、ちぃちゃんと雑談を始める。

内容はいつも他愛もない話ばかりだ。

今日はもうすぐ始まる中間テストの話なんかしてた。


三人でいても、彼女はいつもオレばかりに話しかける。

だけど、話している最中でもオレではない別の方向をチラチラ見ているのをオレも薄々感じていた。


そんな時、オレ達の会話をさえぎるように、突然シィが彼女に声を掛けた。


「これ、ちぃちゃんの絵?」


さっきからシィは美術室にある絵や画材なんかをひたすら手に取ったり眺めたりしていた。

そして、おそらく彼女が描いていたと思われる絵の前で立ち止まりじっと見ていた。


声を掛けられた彼女は慌ててシィの方へ駆け寄る。


二人はそのままポツポツと会話しだした。

みるみるうちに顔が真っ赤になっていく彼女。

シィが一言発する度に……シィの体が動くたびに……彼女の緊張がこちらにまで伝わってくるようだった。
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