キミだけのヒーロー
いったいオレが来てから何通目のメールだ?

オレは呆れ顔でサトシを見てた。


サトシは携帯を開き、そしてその表情をほんの少し変えた。


「あれ? マユからや……。めっちゃ久しぶり-」


どうやら相手は、さっきからメールをやり取りしていた相手ではなかったようだ。


「鈴木真由(スズキマユ)って覚えてへん? オレらと同じ中学やった……」


「さぁ? 知らんけど……」


そう言われてもすぐには思い出せなかった。

多分、オレとは同じクラスになったことがない子なんだと思う。


サトシは携帯をじっと見つめてメールを読んでいたが


「ん?」


一瞬眉間に皺を寄せてそう呟くと、なぜか顔を上げてオレの方を見る。


「何?」


「いや……なんでも」


そう言ってまた下を向くと、口の端を上げてニヤニヤ笑いながら、返信を打ち始めた。


しばらくすると、また携帯が震える。

サトシは頬杖つきながら、携帯を開く。

その瞬間

「おおっ……」


と、何か感心するような声をあげた。


「なんやねん。お前さっきから……」


さっきからのサトシの言動が読めず、オレは不思議がってそう尋ねる。


するとサトシは携帯の画面をオレの方に向けてニッコリ微笑んだ。



「ハイ。ケンジ君、ご指名入りましたー♪」




「はぁ?」

< 33 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop