キミだけのヒーロー
「あの……北川……です」


彼女はかなり緊張しているのか、たとたどしくそう言ってペコリと頭を下げると、はにかむように微笑んで頬を染めた。

顔に似合わず少しハスキーなその声は、オレの心臓を揺さぶった。

つられてオレまで赤くなる。


「おい……?」


「え?」


横からサトシがオレを肘でつつく。

あ。そっか。


「あ……日下部……です」


オレも彼女と同じように呟いてペコリと頭を下げた。

つか、何オレ敬語になってんの!

緊張しすぎだろっ。

なんだ、この間抜けな空気は……。


「んじゃぁ……オレはこれで」


サトシが立ち上がった。


「え? なんでやねん」


オレは慌ててサトシを引きとめようとする。

ヤバイって。

まだ一人にせんとってくれー。


オレが必死で目で訴えるも、サトシは取り合わない。


「CD買いに行きたいねん。 マユ、付き合ってや」


そして結局、マユまで一緒に店を出て行ってしまった。



店内に二人ポツンと残されたオレ達。


俯いている彼女に何を話しかけたらいいかわからず、オレは軽くパニックを起こしていた。

そして必死に話題を探る……。


あ……そうだ。


オレはずっと気に掛かっていたことを思い切って尋ねることにした。


「あのさ……なんでオレなん?」
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