キミだけのヒーロー
「はぁあああああ」


週明けの月曜日、オレは今朝から何度目かの深いため息をつく。

ため息ってのは2種類あって、1つは落ち込んでいる時。

もう1つは、美しい物を眺めてうっとりしている時だ。

もちろん今のオレは後者だ。


さっきから携帯の待ち受け画面を眺めては、ニヤついたり、ため息をついたりしている。


「はよ」


声をかけてきたのはヤマジ。

ヤマジとは同じクラスだ。

さらにヤマジの席はオレの席の前だったりする。


「今日は早いじゃん?」


「ん……」


ヤマジの問いかけに、いつものノリで返事を返さなかったオレに、彼は不思議そうな目を向けた。

オレは相変わらず携帯の画面を見て頬が緩みっぱなしなのだ。


「なんか良いことあった?」


そう聞いてくるヤマジにオレは待ってましたとばかり顔を上げる。


そして……

「聞きたい?」

なんてニヤリと笑って答える。


「いや、別に。言いたくないなら、いいよ」


ヤマジは表情ひとつ変えずにくるりとオレに背を向けた。


「ちょっちょっ……ちょっと! 聞けって! いや、聞いてください! ヤマジ君!」

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