キミだけのヒーロー
またもや突拍子もない提案に戸惑うサユリの背後にオレはまわった。


「あー。力、入ってんなぁ……。サユリは何でも頑張ってしまうタイプなんちゃう? もっと肩の力抜いてみ?」


オレはサユリの肩を揉みながら言う。



「オレ、全てを良い風に考えられるほどプラス思考じゃないし、めっちゃ落ち込むこともたくさんある。けど、悪いことばっかりやない。嫌なこともあれば、良いこともあるよなーって思うねん」


サユリはただ黙ってオレの話を聞いていた。


「嫌なことがあるときは、無理にそれを忘れようとは思わへん。無理すればするだけ、意識しすぎて余計に忘れられへんから。できるだけ力抜いてリラックスして気持ちが楽になるのをじっと待つねん」


「ん……」


「そしたらある日突然楽しいことがふいにやってくんねん。んで、いつの間にか笑顔になってる。後から考えたら、失敗も挫折も全部その先にある良い事に繋がってる気がする」


「ケンジ……」


そう言って振り返りそうになったサユリをオレは止めた。


「あかん。こっち向かんといて。オレ今、めっちゃクサいこと言ったよなぁ? もー。マジで恥ずかしいわ」


今、顔を見られたらマジでやばい。

夕陽のせいだとは言い訳できないぐらい、真っ赤な顔をしてるはずだから。

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