キミだけのヒーロー
「ケンジ!」


横断歩道を渡りきり、あと少しで店の前にたどり着くというところで声を掛けられた。


サユリが傘を差してこちらに走ってきているところだった。

オレも急いで彼女の傘に入れてもらう。


「急な雨でビックリしたね。大丈夫?」


サユリはハンカチでオレの顔を拭きながら心配そうにそう言った。


「うん。けど、おかげでサユリと相合傘や」


オレはニカッと微笑んで、サユリの手から傘を取った。


「ウソ。ホントは持ってたでしょ? 傘」


「へ?」


「お店の2階から見えててん。ケンジが誰かに傘貸してるとこ。角度が悪くて、相手の顔までは見えなかったけど……」


「あはは。見られてた?」


うわっ。

なんか、ごっつ恥ずかしい……。


「ケンジはみんなに優しいね」


「うーん。どうかな。小学生の女の子やってん。オレの妹と同い年ぐらいやったから、ほっとかれへんかったというか……それだけやで?」


なんだか照れくさくて、わざとそっけなくそう言ってしまった。

そしてサユリの傘の中、二人で肩を寄せ合って歩いた。
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