キミだけのヒーロー

それから数日後。

オレはいつものようにヤマジと教室で喋っていた。


バタバタと走る音が聞こえたと思ったら、カナコがやってきた。

目をキラキラさせて、その表情はいかにも得意気な感じだった。


「じゃーん。北野典子情報でーす！」


「北野典子？　ああ……“キタノノリコ”ね」


随分遅い情報だな。

“キリノノリコ”が実は“キタノノリコ”だということを聞いてからすでに１ヶ月は経ってるぞ？


オレの不満など気にする様子もなく、カナコは勝手にオレの隣の席に座って体をこちらに向けた。


そして一呼吸おいて話し始めた。


「北野さん。やっぱり転校したらしいわ」


「そうなんや……」


「うん。中２の途中で引っ越したって」