キミだけのヒーロー
「シィ君!」


その声に振り返るとマネージャーのビーコが立っていた。

ビーコってのはもちろんあだ名。

本名は山田美衣子(ヤマダミイコ)。

サッカー部のマネージャーだ。


「お疲れ様。これ……良かったら食べて?」


もじもじと恥じらいながら、プラスチック容器を差し出すビーコ。

(目がハートになってるし……)


「お! サンキュー! いつもありがとうな!」


得意の王子スマイルで無邪気にその容器を受け取るシィ。

途端にビーコの顔は真っ赤になって、パタパタと駆けていってしまった。


「今日は何やろう……」


シィは呟きながら、そっと容器の蓋を開けた。

中身はレモンのハチミツ漬け。

こんな風に、ビーコは度々シィに差し入れをしている。

その差し入れには彼女の特別な気持ちが込められている、

なんて……

「後でみんなで分けなあかんな」


こんな事を言ってしまうこの男は、全く気付いていない……。



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