キミだけのヒーロー
「うっ……ぐすっ……」


サユリの泣き声は今や嗚咽まじりになっていた。

そばには涙を拭った大量のティッシュが山積みにされている。


そして映画はラストを迎えた。


「うっ……うわーん。こんなの悲しすぎるよぉ……。ネロ―――! パトラッシュ―――!」


そう。

オレ達が見ていたのは、貧しいながらも健気に生きる心優しい少年と犬の友情が描かれ、そして、あまりにも悲しいラストを迎えることで有名な、あの物語である。


「ぐすっ……」


サユリはまだ鼻をすすりながら、オレに顔を向けた。

その途端、彼女の表情が変わった。


「え? ケ……ケンジ……? 大丈夫?」


「うっ……うわぁあああ。見んなや――」


オレは慌てて顔を覆った。

ここで正直に言おう。

ぶっちゃけ泣いてました。

つか、本気泣きでした。
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