キミだけのヒーロー
二人きりにされた空間。

残されたオレ達に会話はない。

でも、そんなぎこちない空気を勝手に感じているのはオレだけのようで、サトシは相変わらず漫画を読みながらニヤついたりしている。

悔しいけど、どんな表情をしても、やっぱりこいつはかっこいい。

あの話が本当だとしても、なんとなく納得してしまう自分がいる。


サトシは突然顔を上げるとパタンと漫画を閉じた。

そして

「続き、続き……」

と言いながら部屋の隅にある本棚の方へ向かった。


その時、テーブルの上に置きっぱなしのサトシの携帯が鳴った。

だけど当の本人は気にする様子もなく、漫画を物色中だ。


「最悪っ!6巻ないし!」


なんて悪態ついてる。

しびれを切らしたオレは声をかけた。


「おい。鳴ってんで」
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