キミだけのヒーロー
いつものように部活を終え、サッカー部の奴らと一緒に校門のあたりまで来たオレは、そこで足が止まった。


「じゃな」
「ごゆっくり~」

気を利かせたつもりなのか、みんなは先に行ってしまった。


目の前にはあの日以来3日ぶりに会うサユリがいた。





サユリは両手で鞄の取っ手をギュと握り締めている。

唇を噛み締め、何かを我慢しているのはオレにも理解できた。

瞳には水分を湛え、ほんの少しの衝撃さえあれば、その粒が崩れ落ちてしまいそうだった。


なぁ?

その涙の意味も、オレにはわかんねーよ。


オレはサユリの横をそのまま素通りしようとした。


「なんで避けるの?」


オレの位置がサユリのちょうど真横に来た時に、振り絞って出したような声が耳に届いた。


「ごめん……。今はオレ……無理やねん」


現時点で精一杯のオレが出せた答え。

正直自分でもどうすればいいかわからないんだ。


「なんで? あたし、嫌われるようなことした?」


サユリはジッとオレを見つめる。

潤んだ瞳にオレの影が映って揺れる。


「なぁ……」
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