キミだけのヒーロー
「ふあああああ。めっちゃヒマ-。でも、ヤマジがいてくれて良かったわー」


オレは大きなあくびをしながら言った。

昨夜は妙な夢を見たせいで、あの後ほとんど眠れなかった。

完全な寝不足だ。



「オレぐらいしか相手できなくて、悪いね」


ヤマジはそう言うと、ジュースをストローですすった。


今日は8月14日。

世間は盆休みの真っ只中だ。

部活が休みなオレはすることもなく時間を持て余していた。

そんな時、ヤマジがお茶でも付き合えと誘ってくれたのだ。


オレ達は2階フロアの窓際の一番奥の席にいた。



その時、窓の外が急に暗くなった気がして目を向けると、窓ガラスにポツポツと水滴がついてきた。

そしてそれは一気に本格的な雨へと変わった。

さっきまでは晴れていたのに、この季節特有の夕立ってのは、ほんと気まぐれだな。


オレは窓の外の景色を見下ろす。

急な雨に慌てて走り出す者もいれば、鞄の中から得意げに傘を出す者もいる。


そして行き交う人々の中に赤い傘を見つけた。
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