クール王子はワケアリいとこ
学校の敷地から出れば手を放してくれると思っていたけれど、皓也はそのまま歩いていた。
「皓也、手離して」
「……」
「何で睨んでたの? 何でわたしの手、掴んでるの?」
「……」
「皓也ってば!」
「……」
何を言っても無言が返ってくるだけ。
溜息をついたわたしは、諦めて大人しく引っ張られることにした。
いくらなんでも家についたら離してくれるだろう。
周りの視線を少し気にしながら何とか家についた。
家の敷地内に入ったところで皓也はやっと手を離してくれる。
そのまま家に入るのかと思ったら、彼は立ち止まって複雑そうな顔でわたしを見た。
「……あんたさ、あーゆー男が好みなの?」
「は?」
何を言われているのか分からなくて、首を傾げる。
「あの先輩。今日会ったばかりなのに名前で呼んでるしさ、ナンパっぽいことされてたし」
「淳先輩の事?」
確認のためそう聞くと、思い切り顔をしかめられた。
さっき不機嫌そうにしたのは、淳先輩を名前で呼んだからってことかな?
一つ謎が解けた。
でも何でわたしの手を掴んで引っ張って来たのかとか、何でわたしの好みの男を聞いているのかとか謎はまだまだある。
でも取りあえずは誤解を解かないと。
「まず言っておくけど、淳先輩は好みってわけじゃないからね? 名前で呼んでるのも、同じ部で苗字が同じ読み方する先輩がいて、紛らわしいからって名前で呼ぶようにって統一されたの」
「そう、なのか?」
「あとナンパっぽいことは確かにされてたけど、断っても『頼むよー』とか言われて正直困ってたくらいなんだから」
最後は何だか少し愚痴っぽくなってしまったけれど、取りあえずわたしの言いたいことは言えた。
「……そっか。……そうか」
わたしの言葉を自分に染み渡らせるかのようにそう繰り返す皓也は、次の瞬間ふわりと笑った。
笑った……笑った!!?
わたしの目の前でありえないと思っていたことが起きている。
女嫌いの皓也が私の前で笑うなんて想像もしていなかった。
しかもお母さん達や松葉、同級生の男子と話しているときに見た笑顔とも違う。
ふわりと優しい笑顔。
元々顔が良いこともあって、目を奪われるほどキレイだった。
思わず見惚れてしまって、色々聞きたいことがあったはずなのに忘れてしまう。
そうしていたら玄関のドアが中から開けられた。
「あ、やっぱり帰ってた。二人で何してんの? 早く家に入れば?」
話し声にでも気づいたんだろうか。松葉がそう言って皓也の袖を掴む。
「皓也兄ちゃん、早く! 昨日の続きやろうぜ!」
「ん? ああ、分かったよ。着替えるから待っててくれよ」
そうして二人は先に家の中へ入って行ってしまった。
「……姉よりいとこが良いのか、弟よ」
置いてけぼりにされて思わずそんな言葉が出て来る。
でもまあそれもそうか。
松葉は皓也が家に来る前から楽しみにしていたし、来たら毎日一緒に遊んでるし。
皓也兄ちゃんなんて呼んで懐いてるし。
そこまで考えてから「はあぁぁぁ」と深く息を吐く。
どうしてだろう。心臓の鼓動が早い。
ドキドキして落ち着かない。
皓也の笑顔を見てからだ。
多分、びっくりしたからだよね。
あんな風に笑うなんて思いもしなかったから。
うん。多分、きっとそう。
「皓也、手離して」
「……」
「何で睨んでたの? 何でわたしの手、掴んでるの?」
「……」
「皓也ってば!」
「……」
何を言っても無言が返ってくるだけ。
溜息をついたわたしは、諦めて大人しく引っ張られることにした。
いくらなんでも家についたら離してくれるだろう。
周りの視線を少し気にしながら何とか家についた。
家の敷地内に入ったところで皓也はやっと手を離してくれる。
そのまま家に入るのかと思ったら、彼は立ち止まって複雑そうな顔でわたしを見た。
「……あんたさ、あーゆー男が好みなの?」
「は?」
何を言われているのか分からなくて、首を傾げる。
「あの先輩。今日会ったばかりなのに名前で呼んでるしさ、ナンパっぽいことされてたし」
「淳先輩の事?」
確認のためそう聞くと、思い切り顔をしかめられた。
さっき不機嫌そうにしたのは、淳先輩を名前で呼んだからってことかな?
一つ謎が解けた。
でも何でわたしの手を掴んで引っ張って来たのかとか、何でわたしの好みの男を聞いているのかとか謎はまだまだある。
でも取りあえずは誤解を解かないと。
「まず言っておくけど、淳先輩は好みってわけじゃないからね? 名前で呼んでるのも、同じ部で苗字が同じ読み方する先輩がいて、紛らわしいからって名前で呼ぶようにって統一されたの」
「そう、なのか?」
「あとナンパっぽいことは確かにされてたけど、断っても『頼むよー』とか言われて正直困ってたくらいなんだから」
最後は何だか少し愚痴っぽくなってしまったけれど、取りあえずわたしの言いたいことは言えた。
「……そっか。……そうか」
わたしの言葉を自分に染み渡らせるかのようにそう繰り返す皓也は、次の瞬間ふわりと笑った。
笑った……笑った!!?
わたしの目の前でありえないと思っていたことが起きている。
女嫌いの皓也が私の前で笑うなんて想像もしていなかった。
しかもお母さん達や松葉、同級生の男子と話しているときに見た笑顔とも違う。
ふわりと優しい笑顔。
元々顔が良いこともあって、目を奪われるほどキレイだった。
思わず見惚れてしまって、色々聞きたいことがあったはずなのに忘れてしまう。
そうしていたら玄関のドアが中から開けられた。
「あ、やっぱり帰ってた。二人で何してんの? 早く家に入れば?」
話し声にでも気づいたんだろうか。松葉がそう言って皓也の袖を掴む。
「皓也兄ちゃん、早く! 昨日の続きやろうぜ!」
「ん? ああ、分かったよ。着替えるから待っててくれよ」
そうして二人は先に家の中へ入って行ってしまった。
「……姉よりいとこが良いのか、弟よ」
置いてけぼりにされて思わずそんな言葉が出て来る。
でもまあそれもそうか。
松葉は皓也が家に来る前から楽しみにしていたし、来たら毎日一緒に遊んでるし。
皓也兄ちゃんなんて呼んで懐いてるし。
そこまで考えてから「はあぁぁぁ」と深く息を吐く。
どうしてだろう。心臓の鼓動が早い。
ドキドキして落ち着かない。
皓也の笑顔を見てからだ。
多分、びっくりしたからだよね。
あんな風に笑うなんて思いもしなかったから。
うん。多分、きっとそう。