クール王子はワケアリいとこ
 安藤先生一色だった今日の学校生活も終わり、わたしは帰り支度(じたく)をしていた。

 今日は部活はないからまっすぐ家に帰るつもり。
 ふと昨日淳先輩に案内を頼まれたことを思い出すけれど、ちゃんと約束はしてないんだからしなくていいだろう。


 優香は今日も部活。バレー部が休みの日は水曜日だから、火曜日と木曜日が休みのわたしとは見事にずれている。
 だから部活のない放課後は大抵真っ直ぐ家に帰っている。

 そういえば、皓也の剣道部はわたしと同じ火曜と木曜が休みだったな。
 だから昨日は同じくらいの時間に昇降口にいたのか。

 何となくそんなことを考えながら教室を出た。
 もしかしたら今日も昇降口で皓也と会えるかもしれない。
 そうなったら、今日も一緒に帰ってくれるのかな?

 そうなったらちょっと嬉しいと思った。

 今まで散々(さんざん)避けられてきたけれど、だからって嫌いだと思ったことは無かったな。
 女嫌いだと思ってからは何だか安心したし。

 そういえば昨日わたしの手を引いて帰ったこととか、好みの男を聞いてきたこととか、理由をまだ聞いてなかった。
 今日も一緒に帰れたら聞いてみよう。

 そう思いながら靴を()き替えていると、声が掛けられた。
 皓也ではない女の子の声が。

「あの……二年のそうび先輩ですよね?」
 おずおずと遠慮(えんりょ)がちに言ったのは一年生の女子だった。
 他にも二人近くにいて、三人でわたしを見ている。

「……うん、そうだけど」
 知らない子達だ。
 何で声を掛けてきたか分からないけれど、とりあえず何の用なのか聞かないと対応に困る。

「えっと、話があるんですけど……ついてきてもらえますか?」
「……」
 おどおどしてハッキリしない様子とついてこいというお願い。
 嫌な予感しかしない。

 明らかにこの子達は使いっぱしりという感じ。
 他に何人かいてもおかしくないだろう。


 断りたいけど……。

「えっと、ちょっと用事があるから早く帰りたいんだけど……」
「そんなに時間は取らせません!」
 今まで話していたのとは別の子が食い気味にハッキリと言った。

「確認したいことがあるだけですから!」
 もう一人の子がそう言ってわたしの背中を押し始める。

 何となく断れなさそうとは思ったけれど、かなり強引な方法で連れていかれる。

「わ、分かった。歩くから、押さないで……」
 それだけは伝えて自分で歩いたけれど、三人に逃がさないとばかりに囲まれながら連れていかれた。
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