クール王子はワケアリいとこ
松葉が騒いでいる声は聞こえないから、一緒に遊んでるわけではないだろう。
それなら部屋にいるはずだ。
わたしは鞄だけ部屋に置いて、皓也の部屋のドアをノックした。
「皓也、わたし。あの後大丈夫だった? 何だか様子がおかしかったけど」
そう聞くと皓也がドアの前まで来た気配がした。
でも何をためらっているのか、そこから先の反応がない。
ドアを開けるとか、声を出すとかしてくれないとわたしもどうすればいいか分からなくなる。
少し待ってみて、もう一度声を掛けてみようかと思ったとき――カチャっと小さな音を立ててドアが少し開いた。
「……手のケガ、大丈夫だったのか?」
ドアが少ししか開いていないのと、皓也が俯いているせいでどんな表情をしているか分からない。
でも、わたしを心配してくれる言葉だったことにホッとした。
「うん、大丈夫だよ。そりゃあまだ痛いけど、傷自体はそんなに深いものでもなかったし」
「……ごめんな。助けに行ったつもりだったのに、ケガさせるはめになって……」
謝られて、やっぱり気にしていたんだなと思った。
今俯いてるのも、そのことで落ち込んでいるからだろうか。
「そんなことないよ。十分助けになったし、ケガはそれこそ皓也のせいじゃないし」
気にしないで欲しくてそう言ったけれど、皓也は顔を上げなかった。
だからつい意気込んでぐっと近付いてしまう。
「本当に、あそこで来てくれて助かったんだよ? だから気にしないで!」
「っ! 分かった! 分かったから、それ以上近付かないでくれ!」
必死そうに言われて、ビクッと体を震わせて止まった。
わたしに近付かないようにか、皓也もドアから離れる。
そのためドアが大きく開いた。
西日が当たらないこの部屋は、この時間少し薄暗くなる。
そんな薄暗さの中なのに皓也の金髪が映えて見えた。
いつも以上に綺麗に見える容姿が目に入る。
辛そうに眉を寄せた皓也は言った。
「悪いけど、しばらく俺に近付かないでくれ。せめて、そのケガが治るまでは」
同じようなことをさっき淳先輩に言われた。
どうして? という言葉は、声にならず口の中だけで終わってしまう。
皓也の表情を見れば、わたしのことが嫌いだから近付くなと言ってるわけじゃないことは分かる。
何か言えないことで理由があるんだってことは……。
でも、だからこそ皓也の辛そうな顔を見ているとわたしも辛い。
何故か胸がギュッとなって苦しかった。
それでもこれ以上皓也を苦しめたくなかったから、理由は分からなくても「分かった」と答えて自分の部屋に戻った。
部屋に戻って、細く長く息を吐く。
近付くなと言われて、悲しい。
でも、嫌いだから言っているって訳じゃないことだけは分かって、少し安心している自分がいる。
わたしは、わたしが今どんな気持ちなのかもはっきりとは分からなかった。
淳先輩の事、皓也の事、そしてわたし自身の事。
分からないことだらけで混乱する。
それに……。
さっきの薄暗い部屋で、皓也の目が――。
「光ってるように見えた……?」
それなら部屋にいるはずだ。
わたしは鞄だけ部屋に置いて、皓也の部屋のドアをノックした。
「皓也、わたし。あの後大丈夫だった? 何だか様子がおかしかったけど」
そう聞くと皓也がドアの前まで来た気配がした。
でも何をためらっているのか、そこから先の反応がない。
ドアを開けるとか、声を出すとかしてくれないとわたしもどうすればいいか分からなくなる。
少し待ってみて、もう一度声を掛けてみようかと思ったとき――カチャっと小さな音を立ててドアが少し開いた。
「……手のケガ、大丈夫だったのか?」
ドアが少ししか開いていないのと、皓也が俯いているせいでどんな表情をしているか分からない。
でも、わたしを心配してくれる言葉だったことにホッとした。
「うん、大丈夫だよ。そりゃあまだ痛いけど、傷自体はそんなに深いものでもなかったし」
「……ごめんな。助けに行ったつもりだったのに、ケガさせるはめになって……」
謝られて、やっぱり気にしていたんだなと思った。
今俯いてるのも、そのことで落ち込んでいるからだろうか。
「そんなことないよ。十分助けになったし、ケガはそれこそ皓也のせいじゃないし」
気にしないで欲しくてそう言ったけれど、皓也は顔を上げなかった。
だからつい意気込んでぐっと近付いてしまう。
「本当に、あそこで来てくれて助かったんだよ? だから気にしないで!」
「っ! 分かった! 分かったから、それ以上近付かないでくれ!」
必死そうに言われて、ビクッと体を震わせて止まった。
わたしに近付かないようにか、皓也もドアから離れる。
そのためドアが大きく開いた。
西日が当たらないこの部屋は、この時間少し薄暗くなる。
そんな薄暗さの中なのに皓也の金髪が映えて見えた。
いつも以上に綺麗に見える容姿が目に入る。
辛そうに眉を寄せた皓也は言った。
「悪いけど、しばらく俺に近付かないでくれ。せめて、そのケガが治るまでは」
同じようなことをさっき淳先輩に言われた。
どうして? という言葉は、声にならず口の中だけで終わってしまう。
皓也の表情を見れば、わたしのことが嫌いだから近付くなと言ってるわけじゃないことは分かる。
何か言えないことで理由があるんだってことは……。
でも、だからこそ皓也の辛そうな顔を見ているとわたしも辛い。
何故か胸がギュッとなって苦しかった。
それでもこれ以上皓也を苦しめたくなかったから、理由は分からなくても「分かった」と答えて自分の部屋に戻った。
部屋に戻って、細く長く息を吐く。
近付くなと言われて、悲しい。
でも、嫌いだから言っているって訳じゃないことだけは分かって、少し安心している自分がいる。
わたしは、わたしが今どんな気持ちなのかもはっきりとは分からなかった。
淳先輩の事、皓也の事、そしてわたし自身の事。
分からないことだらけで混乱する。
それに……。
さっきの薄暗い部屋で、皓也の目が――。
「光ってるように見えた……?」