クール王子はワケアリいとこ
ポカン、としてしまったのはわたしだけじゃないはずだ。
目の前の皓也の友達らしき男子もそんな顔をしているし。
「どうしたんだ? ……あいつ」
少しして気を取り直した彼はそう言ってこちらを向くと「ああ」と納得顔になった。
「あんたがそうび先輩、ですよね? 皓也と付き合ってるって言う。あいつ照れたのかな?」
「……」
どこから突っ込めばいいのか分からない言葉に黙るしかなかった。
「俺、皓也と同じクラスで同じ剣道部の忍野 奏都って言います。よろしく」
人懐っこい笑顔を向けて来る忍野君に、「はぁ」としか返せなかった。
でもそんなわたしの対応を気にすることなく、忍野君は「皓也連れ戻しに行かないと」と言って皓也の去った方に走って行った。
「……何だったの、あれ?」
「……さあ?」
皓也が何故か逃げて、何だか明るい友人が名乗って去って行った。
それ以外に説明しようがない。
優香と共にしばらく呆気に取られていたけど、いつまでもそうしている訳には行かないと家庭科室に急いだ。
家庭科室の前で優香とは別れる。
流石に部活まで付き合ってもらうわけにはいかないから。
ドアを開ける前に軽く深呼吸する。
同級生はもちろん、きっと先輩後輩皆にあの噂は知れ渡ってるだろう。
ちょっと覚悟を決めてからじゃないと中に入れない。
「……よしっ」
軽く決意をしてドアを開ける。
「そうそう。すっげー睨まれてさー、そのあと手つないで帰ってったんだぜ? あれ付き合ってるって話は絶対本当だって」
決意がすぐにも打ち砕かれそうだ。
早くも帰りたい。
ドアを開けたとたん聞こえてきたのは淳先輩の声。
内容からすると一昨日の帰りの時のことを話しているみたいだ。
淳先輩、わたしたちが付き合ってるかもって思っていたのに、昨日は皓也に近付くなとか言ったの?
訳が分からないけど、それも含めて部活が終わったら聞くしかない。
何とかそう自分に言い聞かせてわたしは家庭科室の中に入った。
「あ、萩原。遅かったねー。今日はあなたの噂で持ち切りだよ?」
わたしに気付いた都先輩が早速そんなことを言う。
都先輩からしてこうなら、もう今日の部活は心を無にしてやり過ごすしかなさそうだ。
じゃないとわたしの精神が持たない。
「……その噂、あまり本気にとらないでくださいね」
それだけ言うと、わたしはいつもの席に座って羊毛フェルトの続きを始めた。
あとはもう無心でチクチクチクチク針を刺す。
そんなわたしの様子に、からかおうとでも思ってたであろう人達が諦めて自分の作品を作り始めた。
私への関心が霧散したのを感じ取って、やっと安心出来る。
淳先輩だけはずっと何かを言いたそうにしていたけれど、後でちゃんと話をするつもりだったわたしはそれを綺麗に無視していた。
目の前の皓也の友達らしき男子もそんな顔をしているし。
「どうしたんだ? ……あいつ」
少しして気を取り直した彼はそう言ってこちらを向くと「ああ」と納得顔になった。
「あんたがそうび先輩、ですよね? 皓也と付き合ってるって言う。あいつ照れたのかな?」
「……」
どこから突っ込めばいいのか分からない言葉に黙るしかなかった。
「俺、皓也と同じクラスで同じ剣道部の忍野 奏都って言います。よろしく」
人懐っこい笑顔を向けて来る忍野君に、「はぁ」としか返せなかった。
でもそんなわたしの対応を気にすることなく、忍野君は「皓也連れ戻しに行かないと」と言って皓也の去った方に走って行った。
「……何だったの、あれ?」
「……さあ?」
皓也が何故か逃げて、何だか明るい友人が名乗って去って行った。
それ以外に説明しようがない。
優香と共にしばらく呆気に取られていたけど、いつまでもそうしている訳には行かないと家庭科室に急いだ。
家庭科室の前で優香とは別れる。
流石に部活まで付き合ってもらうわけにはいかないから。
ドアを開ける前に軽く深呼吸する。
同級生はもちろん、きっと先輩後輩皆にあの噂は知れ渡ってるだろう。
ちょっと覚悟を決めてからじゃないと中に入れない。
「……よしっ」
軽く決意をしてドアを開ける。
「そうそう。すっげー睨まれてさー、そのあと手つないで帰ってったんだぜ? あれ付き合ってるって話は絶対本当だって」
決意がすぐにも打ち砕かれそうだ。
早くも帰りたい。
ドアを開けたとたん聞こえてきたのは淳先輩の声。
内容からすると一昨日の帰りの時のことを話しているみたいだ。
淳先輩、わたしたちが付き合ってるかもって思っていたのに、昨日は皓也に近付くなとか言ったの?
訳が分からないけど、それも含めて部活が終わったら聞くしかない。
何とかそう自分に言い聞かせてわたしは家庭科室の中に入った。
「あ、萩原。遅かったねー。今日はあなたの噂で持ち切りだよ?」
わたしに気付いた都先輩が早速そんなことを言う。
都先輩からしてこうなら、もう今日の部活は心を無にしてやり過ごすしかなさそうだ。
じゃないとわたしの精神が持たない。
「……その噂、あまり本気にとらないでくださいね」
それだけ言うと、わたしはいつもの席に座って羊毛フェルトの続きを始めた。
あとはもう無心でチクチクチクチク針を刺す。
そんなわたしの様子に、からかおうとでも思ってたであろう人達が諦めて自分の作品を作り始めた。
私への関心が霧散したのを感じ取って、やっと安心出来る。
淳先輩だけはずっと何かを言いたそうにしていたけれど、後でちゃんと話をするつもりだったわたしはそれを綺麗に無視していた。