クール王子はワケアリいとこ
 翌朝目が覚めると、ボーっとしながら思った。

 ああ、そうだ。
 今日は皓也いないんだったな。

 それが何となく寂しいと感じた。


 とはいえ、落ち込むほどの事じゃないから普通に起きて学校に行く準備をする。

 リビングダイニングに行くと、テキパキ動くお母さんと眠そうな顔の松葉がいた。
 お父さんはいつももう少し後で起きて来るからいない。


 そんな部屋を何となくぐるりと見まわすと。

「皓也兄ちゃんはいないよ」
 と松葉に言われた。

「……何よ。分かってるわよ」
 分かってる事を言われて、ちょっとムッとしながら返すと。

「だって今皓也兄ちゃん探してたじゃんか」
「はあ? ちょっと見回してただけじゃない」

 別に皓也を探してた訳じゃないって主張したのに、松葉は数回(またた)いた後「気づいてなかったんだー」とニヤニヤして言った。


「……何がよ?」
「朝起きたらそうやって見回すクセ、皓也兄ちゃんが来てからやる様になったじゃんか」
「そんなこと……」

 無いって、言い切れなかった。

 確かに皓也が来る前にはやってなかった気がする。
 でもクセだと思われるほどしていたとは思っていなかった。


「今週に入ってからかなぁ? 特にやる様になった気がする」
「っ……!」

 今週に入ってから……。
 多分、正確には火曜日からだ。
 皓也の笑顔を見てから……。


 笑顔を見てから、特に気にする様になった自覚はある。
 でも松葉の言う事を信じるなら、もっと前。初めからわたしは皓也を気にしていたって事になる。


「……」
 松葉のニヤニヤ顔は腹がたったけど、わたしは自分が思っているより皓也を気にしていたかも知れない事実に動揺していた。


 嫌いで気にしていたって事は絶対に無い。
 そんなふうに思った事なんて無いから。

 でも、それなら何で気にしてたのかっていう疑問が出てくる。

 その答えはすぐに出そうな気がする。
 でも答えを出してしまっていいのかって考えてもしまう。


 だって、わたしと皓也はいとこ。
 血のつながりは無いし、問題は無いんだろうけど……。

 それでも親戚になったんだ。
 もし答えを出して、悪い結果になったら気まずい状態になるかも知れない。


 そう思うと、最後の一線を越えて答えを出すのが躊躇(ためら)われた。


「はぁ」

 思わずため息がこぼれる。

 何でこう悩み事が次から次へと増えて行っちゃうのかな?
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